愛称『ロングトム・ジュニア』(2013/10)
日本光学工業(株) 5cm天体望遠鏡 by offline

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写真01 購入して44年が経過した「ロングトムJr.」 (2013年夏撮影)

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 写真02 格納状態           写真03 格納箱銘板

1.購入
購入は1969(昭和44)年7月。
格納箱の裏に貼られたラベルの年月日欄に[34]の文字が記入してありますので、製品自体は1959(昭和34)年に製造されたものかもしれません。
だとすると、現時点で54年前の製品ということになります。

2.仕様
[鏡筒] 口径50mm/焦点距離750mm/F15 アクロマート屈折望遠鏡
[架台] 赤経フリーストップ式簡易赤道儀
[付属品] 接眼レンズ2個(H-18mm/O-9mm)、アイピース装着用サングラス、
    太陽投影板

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 写真04            写真05

写真04/05 購入当時の姿(1969年秋撮影)

3.購入までの経緯
中学生になったころだったと思いますが、市内でいちばん賑やかな商店街の時計店のショーウインドウに、この望遠鏡を見つけたとき、値札を見て目を疑ったことを覚えています。確か3万円をちょっと切るぐらいの値段がついていました。


当時の3万円は大人でもおいそれと出せる金額ではありません。中学生の私はただ見つめるだけでした。どこか他の望遠鏡とは風格が違い、本物の光学機器としての美しさを感じたのか店の前を通るたびにいつも眺めていたものです。

そのうちにショーウインドウから姿を消し、売れてしまったのだと思っていたら、翌年またその望遠鏡が展示されているのを見ました。その後も何年か展示したり引っ込めたりが繰り返されていましたが、私が高校生のころにはもう姿を見ることはなくなっていました。
そのころには日本光学工業が品質の高いカメラや双眼鏡を作っていることを知っていましたから、やはりあの望遠鏡は並みの望遠鏡ではなかったんだと思い知らされ、あのころ買えていたらと残念でなりませんでした。

高校を卒業した年、無性にその望遠鏡のことが思い出され、気になって仕方ありません。あれだけの年月売れなかったのだから、ひょっとしてまだ売れてないかもしれないと思い、ある日、その時計店に行って恐る恐る尋ねてみました。すると、拍子抜けするほど即座に「あります、あります」の返事。店側も在庫処分できずに困り果てていたようです。そのとき私は2カ月間アルバイトして得た収入を全額握りしめていましたので、ついに、しかもあっけなく手に入れることができたのです。
ラッキーなことに、白い鏡筒の一部に重大な汚れがあり、それを気にするフリをしていると、「値引きします」と。結局24,000円で足かけ6年の月日をかけて膨らませてきた夢がかなった瞬間であり、店にとっては10年もの間寝かせた(と思われる)在庫がようやくはけた瞬間でした。

ところで、鏡筒の一部にある重大な汚れとは、店側が長年保管している間に、鏡筒の保護のために巻きつけていたポスターらしき紙の印刷面が、鏡筒バンドで締めつけられた部分だけ鏡筒の塗装に転写してしまったものでした。鏡筒バンドにちょうど隠れるため、見た目にはなんの問題もありませんが、後に塗装し替えるきっかけとなりました。その結果、現在は写真のようにシルバーメタリックとワインレッドのコンビネーションとなっています。

なお、『ロングトム・ジュニア』という愛称ですが、1972年、地人書館から「天文と気象」(懐かし~い!!)の別冊として「天体望遠鏡のすべて」が発行されることになり、この望遠鏡のレポート依頼があったため、考えたあげく、この名前を思いつき、レポートのタイトルにしました。数々の星の著書で知られる故・野尻抱影氏の愛機が日本光学の10cm屈折望遠鏡で、それに『ロングトム』と命名されていたという話から、同じ日本光学製で、こちらは5cmなので『ジュニア』を付け加えただけ。イージーですねぇ。

4.評価
さて、使用感ですが、製造する側の都合を押し付けることなく、使う身になった配慮が行き届いているため、操作性は非常に良好です。そして、模範的な構造とていねいな加工はさすがです。小口径望遠鏡にもかかわらず、手を抜いたところはいっさい見られません。まさに光学機器はこうあるべきだという見本です。

接眼レンズの選択も適切で、H-18mm(42倍)とO-9mm(83倍)が付属しています。H-18mmはMHタイプ、O-9mmはブローセルタイプです。
アクロマートですから若干の色収差はありますが、光害の市街地でさそり座のM4に一条の星列を見たとき、光学精度の確かさを実感しました。

ファインダーは付属していませんが、F15の鏡筒は狙いが定めやすく、不便を感じたことはありません。

架台は、赤経側がフリーストップの簡易赤道儀となっています。
微動装置はありません。細身ですが鋳鉄製なのでビクともしませんし、十分な太さの三脚とあいまって、振動とは無縁です。動きもスムーズなので、付属の接眼レンズの倍率では微動装置の必要を感じません。

このように非常に満足度の高い望遠鏡なのですが、たったひとつの泣きどころは、古い製品ゆえに天頂プリズムが手に入らなかったことです。この望遠鏡の天頂プリズムは接眼筒ごと差し替える専用タイプなので、よくある接眼スリーブに差し込むタイプではピントが合いません。天頂を見るには苦しい姿勢を強いられました。

時は流れ、アマチュア用の望遠鏡がしだいに大型化してくると、この小さな望遠鏡は主役の座を譲り、重量機材を運び出すかどうか決めるためのシーイング確認用として使うぐらいでしたが、ドームを設置した2008年秋以降はその役目もなくなりました。しかし、眠らせておくには忍びないので、今後は太陽担当に就任させようと思っています。

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 写真06          写真07          写真08

写真06 光軸修正装置付き対物レンズ(押しネジは代替品です)
写真07 スリ割りの入った対物レンズ押さえリング
写真08 ドローチューブに直接歯切りされたラックギヤ(ドローチューブ
        のメッキが傷んできたため一部はがしています)

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 写真09          写真10          写真11

写真09 ドローチューブのガイドレール(ガイドピース固定ネジは代替品です)
写真10 接眼筒接続部
写真11 接眼レンズ(右はサングラス)

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 写真12        写真13     写真14     写真15

写真12 真鍮リング締付式の太陽投影板固定部
写真13 簡易赤道儀架台
写真14 自由雲台式の極軸
写真15 極軸固定レバー

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 写真16         写真17          写真18

写真16 土星 1969.10.22 22h42m 1/4秒 minolta SR-1s 55mm F1.7
                                                  50mm/750mm Or9mmコリメート Tri-X
写真17 月面 1971.07.14 01h21m 1/4秒 minolta SR-1s 55mm F1.7
                                                  50mm/750mm Or9mmコリメート Tri-X
写真18 星空の下で 1969.08.13 22h20m~1min minolta SR-1s 55mm F1.7→F1.7
                                         Tri-X 石城山

以上